戦士たちは“帰還”を選ばなかった——。
混沌のモザイク世界・ディスノミアの危機は去った。
並行して存在した数多の破滅の可能性は、異世界より呼び寄せられた英雄たちと
創造神の末裔たるアルタメノス皇帝アデル・ベリアス一族の奮闘によってすべて退けられた。
凶神は討たれ、ディスノミアに施されていた次元の檻は解除され
戦士たちはそれぞれの故郷となる世界に帰還を遂げる…はずであった。
しかし、すべての戦いを見届け、その結末に異を唱える者がいた。
太陽神バラルの目となり、一介の人間の立場で、あらゆる並行世界の出来事を
運命に抗う英雄たちの冒険すべてを見守った存在。
その者、リベルは気づいていた。
彼らが元の世界に帰れば、彼らのディスノミアでの記憶と体験は
すべて消え去ってしまうだろうと。
それはリベルには、消滅に等しいことだと思われた。
ゆえにリベルは太陽神バラルにたったひとつの力を求めた。
新天地となる天体を時空の彼方より呼び寄せ、
勇敢な戦士たちがディスノミアでの記憶を留めたまま暮らすことのできる
新世界とするための力を。
願いは聞き届けられ、神に匹敵する力を授かったリベルは、
滅びかけていた“落日の星”にそのすべてを
惜しみなく注いで“ディミルヘイム”へと造り替えた。
戦士たちは掬い上げられ、元の世界に存在する自分自身に吸収されて消えてしまうことなく、
この新天地で平和に暮らしていける。
——リベルの宿願は成就したかに見えた。
だが、ディミルヘイムには、創造主リベルが思いもよらぬ破滅の種が混ざり込んでいた。
叙事詩の幕は再び切って落とされる。
英雄たちは立ち上がる。
運命を切り拓く不屈の闘志を抱いて——。